システムの保守・運用とは?契約前に確認すべき6つのポイントと費用の考え方

システム開発というと、どうしても「作るまで」に意識が向きがちです。しかし、システムを長く安定して使い続けるためには、リリース後の保守・運用が欠かせません。

「保守契約を結ぶべきか分からない」「見積もりに保守費用が入っていたが、何に対する費用なのか分からない」といった声もよく耳にします。本記事では、保守と運用の違いから、契約前に確認すべきポイント、費用の考え方までを解説します。

1. システムの「保守」と「運用」の違い

保守と運用はまとめて語られることが多いものの、本来は異なる業務です。

保守 運用
目的 システムを修正・更新し、使える状態を保つ システムを日々正常に動かし続ける
主な作業 不具合修正、OS・ライブラリの更新対応、セキュリティ対策、小規模な機能改修 稼働監視、バックアップ、データ管理、利用者からの問い合わせ対応
イメージ 車の点検・修理 車の日常的な運転・給油

どこまでを開発会社に任せ、どこからを自社で行うのかは、会社ごとに異なります。まずは「保守」と「運用」を分けて考えることで、必要な支援の範囲が整理しやすくなります。

2. なぜ保守が必要なのか

「きちんとテストしたのだから、リリース後は手を入れなくても動くのでは」と思われるかもしれません。しかし、システムを取り巻く環境は常に変化しています。

  • 技術環境の変化:OS、ブラウザ、サーバー、ライブラリなどは定期的に更新され、古いバージョンはサポートが終了します。
  • セキュリティ上の脅威:新たな脆弱性が日々発見されており、放置すると情報漏えいなどのリスクにつながります。
  • 業務の変化:法改正、組織変更、取引先の増加などにより、システムにも変更が必要になります。
  • 潜在的な不具合:テストでは発生しなかった条件の組み合わせで、稼働後に不具合が見つかることもあります。

保守を行わずに放置すると、ある日突然システムが使えなくなったり、改修しようとしたときに大規模な作り直しが必要になったりすることがあります。

3. 保守契約で確認すべき6つのポイント

ポイント 1
対応範囲

最も重要なのが「何が保守に含まれ、何が含まれないか」です。たとえば、次のような項目について確認しておきましょう。

  • 不具合の調査・修正
  • OS・ミドルウェア・ライブラリのアップデート対応
  • セキュリティパッチの適用
  • 操作方法などの問い合わせ対応
  • 軽微な機能改修や画面の文言変更
  • サーバーの監視・バックアップ

「軽微な改修」の範囲は解釈が分かれやすいため、月あたりの作業時間の上限など、具体的な基準で決めておくと安心です。

ポイント 2
対応時間と連絡方法

平日の日中のみか、夜間・休日も対応するのか。問い合わせはメール、電話、チャットのどれで受け付けるのか。システムの重要度に応じて必要な体制は変わります。24時間止められないシステムと、社内の一部門で平日だけ使うシステムとでは、求める水準も費用も大きく異なります。

ポイント 3
障害時の対応スピード

障害が起きたとき、何時間以内に一次回答があり、どれくらいで復旧を目指すのかを確認します。障害の重大度(業務が完全に止まる、一部機能が使えない、など)ごとに目標時間を決めておくのが一般的です。

ポイント 4
費用の算定方法

保守費用の決め方には、主に次のような形があります。

  • 月額固定型:毎月一定額を支払い、決められた範囲内の対応を受ける
  • 時間契約型:月あたりの作業時間を決めて契約し、超過分は別途精算する
  • スポット型:必要なときに都度見積もりを取って依頼する

月額固定型は予算を立てやすい一方、対応が少ない月も費用が発生します。スポット型は無駄がない反面、緊急時にすぐ対応してもらえない可能性があります。システムの重要度と、改修の頻度を踏まえて選ぶことが大切です。

ポイント 5
契約期間と更新・解約の条件

契約期間、自動更新の有無、解約の申し出期限、費用改定の条件などを確認します。将来、保守先を変更する可能性も考え、ソースコードや設計書などの資料の引き渡し条件も確認しておくと安心です。

ポイント 6
報告の方法

月次の作業報告書を提出してもらえるか、定期的な打ち合わせの機会があるかも確認しましょう。どのような対応が行われたのかが見えることで、費用の妥当性を判断しやすくなり、システムの状態も把握できます。

4. 「契約不適合責任」と保守の違い

よく混同されるのが、開発契約における「契約不適合責任」と保守契約の関係です。

請負契約でシステム開発を依頼した場合、納品物が契約内容に適合しないとき、発注者は開発会社に修補などを求めることができます。民法では、発注者が不適合を知った時から1年以内に通知する必要があるとされていますが、実務では契約書で「検収後○か月」などと別の期間を定めていることが多くあります。

ただし、契約不適合責任で対応されるのは、あくまで「契約内容と違う」部分です。OSの更新への対応、新たなセキュリティ対策、業務変化にともなう改修、操作に関する問い合わせなどは対象外です。これらをカバーするのが保守契約であり、両者は役割が異なります。具体的な扱いは契約によって異なるため、不明点は契約前に開発会社へ確認し、必要に応じて専門家にご相談ください。

5. 保守費用の考え方

保守費用は、システムの規模や求める対応水準によって大きく変わります。目安の一つとして、年間の保守費用を開発費に対する割合で考える方法がありますが、あくまで参考値にすぎません。

大切なのは、金額の大小だけで判断しないことです。保守費用を削った結果、障害時に対応が遅れて業務が止まれば、その損失のほうがはるかに大きくなることもあります。「システムが止まったら、どれくらい困るのか」を基準に、必要な対応水準を考えることをおすすめします。

また、保守費用は開発時の見積もりと合わせて確認しておくことが重要です。開発費だけで比較すると、リリース後の総費用で逆転するケースもあります。見積もりの確認ポイントについては「システム開発の見積もりがブレる理由と失敗しない確認ポイント7つ」もあわせてご覧ください。

6. 今の保守契約を見直したいときは

すでに稼働しているシステムについて、「保守費用を払っているが、何をしてもらっているのか分からない」「開発した会社と連絡が取りにくくなった」といった悩みを抱えている方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、次の点から見直してみることをおすすめします。

  • 現在の契約内容を確認する:対応範囲や費用の内訳、解約条件を改めて確認します。
  • システムの資料がそろっているか確認する:ソースコード、設計書、サーバーの情報などが手元にあるかを確認します。これらがないと、保守先の変更が難しくなります。
  • システムの状態を把握する:使用している技術のサポート期限が迫っていないか、セキュリティ上の問題がないかを調べます。

他社が開発したシステムの保守を引き継ぐ場合、引き継ぐ側の会社がまず現状調査を行うのが一般的です。調査の結果によっては、保守を続けるよりも改修や作り直しを検討したほうがよいケースもあります。その判断の考え方については「既存システム改修と新規開発、どちらを選ぶべき?判断基準6つを解説」をご覧ください。

7. まとめ

システムを長く安全に使い続けるためには、リリース後の保守・運用が欠かせません。保守契約を結ぶ前に、次の6つのポイントを確認しましょう。

  • 対応範囲(含まれるもの・含まれないもの)
  • 対応時間と連絡方法
  • 障害時の対応スピード
  • 費用の算定方法
  • 契約期間と更新・解約の条件
  • 報告の方法

保守は「万が一のための保険」であると同時に、システムを業務の変化に合わせて育てていくための仕組みでもあります。開発会社を選ぶ段階から、リリース後の関係まで見据えて検討することが、システム投資を成功させる鍵になります。

K-bridgeでは、開発からリリース後の保守・運用まで一貫してサポートしています。現在お使いのシステムの保守についてのご相談も承っていますので、お気軽にお問い合わせください。

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